旧国鉄の一般形電車。
国鉄初のVVVFインバータ制御電車。86年11月登場。
80年代より私鉄各社でに試験的導入が開始されたVVVFインバータ制御車両であるが、国鉄でも新幹線を始めとするいくつかの新規路線においての運用を前提とした試験が開始された。そこで、101系を改造した上で試験が開始されることとなり、その結果を営業用車両に反映させたのが本系列である。
投入線区としては、地下鉄乗り入れという特殊な環境とチョッパ制御車である203系との比較が可能である、ということから常磐緩行線が選出された。
当該路線において、主力となっているのは前述のように201系をベースとしたアルミ車体の203系であったが、本系列製造時には既に次世代車である205系が登場していたこともあり、同系をベースとした軽量ステンレス構造が採用されている。
地下鉄区間を走行することから、前面中央部に貫通路が設けられたほか、一部部品が難燃性の高い物となった点、ルーバーの有無以外は基本的に205系に準拠している。ゆえに、一編成のみのマイナーな存在でありながら「どこかで見たことのある」外観を持ち、それでいて発車時の音が明らかに違うという非常に特異なキャラクターを持った車輌となった。
国鉄最初のインバータ制御車という意欲的な車輌ではあったのだが、201系同様国鉄時代後期の「新機軸」搭載車輌のご多分に漏れず、その前途にはコストという越えられない壁が立ちはだかることとなった。編成数が足りていた常磐はもちろん、他線区にも量産投入されることはなかった。
結局、本系列登場から5ヵ月後には国鉄は解体され、史上空前のバブル景気に押されつつ誕生したJR各社は、不確定性の伴うインバータ搭載車ではなく、抵抗制御をベースとした堅実な205系/211系及びそれをベースとした車輌を大量に製造することを選択したのである。
こうして、パイオニア(といっても日本全体では後発)でありながら不遇な運命を辿ることになるのだが、それに追い討ちをかけるようにJR西日本が独自開発の汎用地下鉄対応通勤車に207という形式名を付番することになったのだ。当然ながら直接的な繋がりはなく、また0番台からの付番であるために車番に重複はない。しかし、この系列の登場によって、一本しか存在しない本形式の影はますます薄くなってしまったのである。
加えて、一本のみの存在でかつ試作要素が強いという性格ゆえに、扱いや保守が難しいという厳しい現実が待ち受けていた。そのため、全検時には部品確保に職員が四苦八苦したり、前面の化粧板と異なる色の帯ステッカーを間違って張られたりと、エピソードには事欠かない。さらに、一時期209系以降の新世代インバータ車に準じた機器類に換装するということも検討されたというが、結局最後まで実現することはなかった。
余談ではあるが、本形式登場から十数年後に武蔵野線に転属した205系が動力車比率低下に伴う粘着力確保のためにVVVFインバータ化された。205系の車体にインバータ制御という組み合わせは、本系列と非常に近いディメンションではあるのだが、結局207系にはならず205系5000番代に区分けされたのみにとどまっている。
さて、前述のように非常に癖の強い車輌であることから、E233系2000番代の常磐緩行線投入に伴い203系とともに置き換えられる事が決定。E233系2000番代登場後の09年12月にさよなら運転を実施、10年1月に廃車となった。 |
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